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私たちが生活する現代の日本の社会は、科学や技術の進展に伴い、今までにない快適で便利な社会となり、高度な文明を享受するようになりました。巷間には物があふれ、自由に何でも実現することができるような錯覚さえ生じています。世界を見渡せば、経済はすでに深く繋がり、多くの国々が連携するようになりました。しかし、ひとたび目を転じると、この現実の社会の中に大きな問題が生じつつあることも否定できません。
その一つは、経済の充実、物質的な豊かさこそが人間の幸福の最大なるものであるように考えられるに至り、すべての価値が金銭に換算されるようになったことでありましょう。さらには、経済のグローバリゼーションの中で、私たちも、否が応にも世界経済の中に組み込まれ、それが新たな緊張をも生み出すことになりました。
また身近なところを見ても、利潤の追求を第一義と捉える人が増え、人々の生き方にも大きな変化が生じました。自分のことだけを考える利己的な人々、退廃的に生きる人々、働く意欲を持つことができず引きこもる人々など、今までには考えられなかった価値観さえ生まれ、社会の中に混乱と格差が目につく時代となってしまいました。価値観の変化というよりは価値観を喪失した時代というのが現代なのかも知れません。
しかし、歴史を振り返ってみますと、私たちのこの国は、古来より仏教や儒教、道教などの外来思想を受容しつつ、豊かで繊細な自然環境の上に、世界でも比類のない独自な精神文化を築いて参りました。特に紀伊半島を中心とする地域は、海と川と霊峰から成る聖域を形成しており、いくつもの歴史的大事件を飲み込みつつ霊性の基層を守ってきました。とりわけて紀伊半島の東に位置する伊勢の神宮は、太古より今日に至るまで、人々の精神的な拠り所となり、第六十二回を迎える二十年に一度の遷宮は、その都度、わが国の再生を祈る行事として引き継がれています。
ここに、今日混迷する時代にあって、現代社会の新生に向かって有志一同が伊勢の地に集い、我が国の基層精神を再認識しつつ、世界に広がる平和の指針となる価値観の創造をめざし、日本及び世界の宗教関係者・研究者のフォーラム設立を発起する次第です。
【事務局】 |